武蔵野 山田美妙 青空文庫より~②

武蔵野 山田美妙 青空文庫より~②              下  夜は根城を明け渡した。竹藪たけやぶに伏勢を張ッている村雀むらすずめはあらたに軍議を開き初め、閨ねやの隙間すきまから斫きり込んで来る暁の光は次第にあたりの闇を追い退のけ、遠山の角には茜あかねの幕がわたり、遠近おちこちの渓間たにまからは朝雲の狼煙のろしが立ち昇る。…

続きを読む

武蔵野 山田美妙 青空文庫より~①

武蔵野 山田美妙 青空文庫より〜①      上     この武蔵野は時代物語ゆえ、まだ例はないが、その中の人物の言葉をば一種の体で書いた。この風の言葉は慶長ごろの俗語に足利ごろの俗語とを交ぜたものゆえ大概その時代には相応しているだろう。  ああ今の東京とうけい、昔の武蔵野むさしの。今は錐きりも立てられぬほどの賑にぎわしさ、昔は関も立てられぬほどの広さ。今仲…

続きを読む

武蔵野 国木田独歩 青空文庫より~

武蔵野 国木田独歩 青空文庫より〜      一 「武蔵野の俤おもかげは今わずかに入間いるま郡に残れり」と自分は文政年間にできた地図で見たことがある。そしてその地図に入間郡「小手指原こてさしはら久米川は古戦場なり太平記元弘三年五月十一日源平小手指原にて戦うこと一日がうちに三十余たび日暮れは平家三里退きて久米川に陣を取る明れば源氏久米川の陣へ押寄せると載せたるはこのあたりなるべし」…

続きを読む

スポンサーリンク